アポトーシス
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うららかな春、
みごとな薄桃色の花を枝いっぱいにひらめかせていた桜の木も、
長くなった夜と、そのとばりを吹き抜ける冷たい風に押し切られるように、
赤くなった葉を枝から散らす。
神社の玉砂利は、ほどなく錦彩のじゅうたんで敷き詰められるだろう。

アポトーシス。

個体をよりよい状態に保つための、細胞の自殺。

落葉は、次の春に命をつなげるための、植物が行う自己破壊のプログラムである。
木々は葉を落とすことによって放出されるエネルギーを抑え、
次世代への子孫を育む新しい寝床のために冬眠に入る。
アポトーシスが行われるのは、植物の体だけではない。
動物の体内でも、確実にそれは起こり、日々新しい細胞と入れ替わる。
そういう生と死が混沌と溶け合う中で、私たちは命を保っている。

紅葉に命の最後のきらめきを見、
落葉にその終わりを投影してうっすらと哀しさを覚えるのは、
私たちの内側で起こっているから目に見えない、
でも確実に訪れる個体としての終末を、
木々の四季の営みに感じるからなのかもしれない。

アポトーシス。

次世代に続く終わり。
だからこそ美しい、と、
心から思える日が来るのだろうか。

深まる秋の中で、燃え上がるように呼吸する葉を、
ただ、眺めている。
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by nasuka00 | 2006-11-09 14:17 | essay
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なかなか旅に出られませんが、旅行に行ったつもりで一筆。
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